私どもは経営者の方々とお話しする機会も多いのですが、経営者の方々が直感的に自社のリスクを認識していることに驚かされます。事業を遂行するということはリスクへの挑戦なのかもしれません。ただ、それがなかなか従業員の方々と共有されにくい。また、利益あっての企業の存続です。利益が出ないというのはそれ自体が大きなリスクになっています。
リスクマネジメントや内部監査のお手伝いをすることが多い中で、利益を出していくには経営者の大胆な発想と決断なくしては成り立たず、そうした発想と決断の実行の後にリスクマネジメント等が進められると感じています。1990年代中頃からの企業のリストラや巨大合併も、利益体質にするために通らねばならなかった道筋だったのでしょう。そして、利益体質になって、やっと内部統制や内部監査の議論ができるのだと思います。
もしも大胆な発想と決断ができないまま今日を迎え、法制度による内部統制や内部監査が求められるとすれば、そこには経営者のジレンマ、すなわち、自主的な判断が許されないコスト増の課題だけが残るような気がします。
私どもは単にコスト負担増になる内部統制や内部監査の実施をお勧めすることはありません。事業の選択と集中に向けて大胆な発想と決断を進める経営者の方々に対して、経営活力の視点から企業改革を全面的に支援していくことを目指しています。
(昨今の食品偽装問題等の発覚は、法を犯さなくては成り立たない、利益の出ないビジネスしか日本には残されていないのかと憂いてしまいます。今の日本の生活レベルを保つだけの利益が出るビジネスが存在しないとすれば、生活のレベルを下げるか、少しでも利益の出るように創造力と日々の努力とを怠らないことしか解決はなく、ここでも大胆な発想と決断が必要なのでしょう。マスコミがコンプライアンスや内部統制を声高に叫んだとしても、国境なき激動の世界経済の中で、どうすれば利益の出るビジネスとして成り立つかを抜本的に見直さなければ、国としても事業家としても消費者としても不幸な世の中になるのではないでしょうか。)